サン・サヴァンのロマネスク壁画10選┃ロマネスク写真館

池田健二氏のロマネスク写真館20回目の投稿となります。

池田健二氏が撮った美しい写真と解説をどうぞお楽しみください。

目次

第20回のテーマ-「サン・サヴァンのロマネスク壁画10選」

フランス中西部のポワトゥー地方。その東端にロワール川の支流であるガルタンプ川が流れています。その川岸に建つサン・サヴァン・エ・シプリアン修道院の教会は、11世紀末に描かれたロマネスクを代表する壁画(天井画)があることで有名です。

修道院の創建は9世紀初頭にさかのぼりますが、現在の教会が建設されたのは11世紀末のこと。クリュニー修道院の統治下においてでした。身廊の天井を飾るフレスコ画も当時に描かれたものです。

天井には画面の展開の邪魔になる横断アーチがありません。ということは、建設当初からフレスコ画を描く計画だったのでしょう。赤、白、黄、緑、茶などの数色で表現されたその画面は明るく、筆遣いは素早くて大胆です。

主題は明確で、旧約聖書の『創世記』と『出エジプト記』に基づく場面が展開しています。「天地創造」「ノアの物語」「バベルの塔」「ヨセフの物語」「モーセの物語」などですが、図像の配置は複雑で、天井を見上げながら場面を読み解くのは容易ではありません。首も痛くなりますし。

1.身廊の天井を飾るフレスコ画

トンネル状の長い身廊の天井に、左右2段ずつ、つまり4段に別れた画面配置で旧約聖書の諸場面が展開しています。身廊の天井の西端にあった「天地創造」の場面は消えていますが、残りの画面の保存状態は良好です。

2.カインとアベルの供犠

アダムとエバの二人の息子たちの物語は良く残っています。兄カインは農夫となり、弟アベルは羊飼いになります。そしてカインは麦の初穂を、アベルは羊の初子を神に捧げますが、神はアベルだけを祝福します。それが次の悲劇を生むことになります。

3.カインがアベルを殺す

神が弟アベルだけを祝福したことに嫉妬した兄カインは、アベルを野に導き出して殺してしまいます。この場面ではどうも撲殺されているようです。その背後だけは赤く塗られていますが、これも旧約聖書の記述に従ったものです。

4.ノアの箱舟

良く知られている「ノアの箱舟」を描く一場面です。箱舟は北の海で用いられていたダッカール船(ヴァンキング・シップ)の形をしています。三階建ての船室には神の命令によってノアが乗船させた動物たち姿が見えます。

5.泥酔するノア

箱舟を出たノアは農夫となって葡萄を育てます。その後が問題です。ワインを飲み過ぎたノアは、衣の前をはだけたままで眠り込みます。それを見た息子のハムは兄弟のセムとヤペテに報告し、セムとヤペテはノアを衣で覆ったのでした。

6.バベルと塔

バベルの塔と聞くと、すぐにブリューゲルが描いた円錐状の塔をイメージしてしまいますが、ここではロマネスクの教会の塔の姿をしています。右には石を運ぶ人々、左には人々の傲慢を罰して言葉をバラバラにする神の姿があります。

7.奪われた祝福

アブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフの四人の族長たちの物語も描かれています。これは年老いて目が衰えたイサクを騙すことで、二男のヤコブが後継としての祝福を受ける場面です。ヤコブは手に羊の毛を巻いて、母リベカが準備した料理を差し出しています。

8.ファラオがヨセフに指輪を与える

兄たちに憎まれ、エジプトの高官に売られたヨセフは、誣告によって牢獄に入れられます。しかし、夢解きの才能があったヨセフは、呼び出されてファラオの夢を読み解き、高官に取り立てられます。ファラオは権力のしるしである指輪をヨセフに与えています。

9.紅海を渡る

モーセはファラオの許しを得てイスラエル人を率いてエジプトを出ますが、心変わりしたファラオは軍を率いて後を追います。紅海に追い詰められたモーセですが、神の力で海が割れ、無事に紅海を渡ります。その後水が戻り、ファラオの軍は水に呑まれす。

10.十戒を授かる

イスラエル人を率いるモーセは長い旅の途中でシナイ山に登り、神から十戒を刻んだ石板を受け取ります。その周囲では天使たちの吹くラッパの音が鳴り響いています。これを最後に後の画面は消えています。「モーセと金の牛」の場面が続いていたはずですが。

いかがでしたでしょうか。次回も是非ご覧ください。

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