バグエスの教会のロマネスク壁画10選┃ロマネスク写真館

池田健二氏のロマネスク写真館23回目の投稿となります。

池田健二氏が撮った美しい写真と解説をどうぞお楽しみください。

目次

第23回のテーマ-「バグエスの教会のロマネスク壁画10選」

北スペインのアラゴン地方にある小さな村バグエス。その郊外の高台に、聖フリアンと聖女バシリサに捧げる簡素なロマネスク教会が建っています。11世紀末に建設された、単身廊と半円の後陣からなるロンバルディア様式の教会です。

この教会の内部で、1950年代に見事な壁画が発見されました。12世紀初頭に描かれた作品のようです。壁画は1966年に壁から剥がされ、サラゴッサでお披露目された後に、1968年からハカの司教区美術館で展示されるようになりました。

ハカ司教区美術館の展示は、館内にバグエスの教会の内部空間を復元した上で、剥がした壁画を移設する方式です。壁画は身廊の左右と後陣の壁面に描かれていて、欠損した部分もありますが、緑、黄、茶、白を基調とする色彩が良く残っています。

身廊の左右の壁面は4段に区切られています。その最上段には『創世記』に記された人類の創造の物語が描かれています。残る3段に展開しているのは、『四福音書』に記されたイエス・キリストの生涯の諸場面です。後陣にはキリストの受難と昇天の場面があります。
今回はこのバグエスの壁画からイエスの生涯を描く重要な諸場面を紹介します。

1.バグエスの壁画

これがハカの司教区美術館に再現されたバグエスの壁画の全体です。画面の7割ぐらいが残っていますが、他の部分は想像してみるしかありません。身廊の下部にはそれぞれの場面を解説する照明されたパネルが設置されています。

2.キリストの昇天

後陣の壁画は3段構成で、最上部の半円蓋には昇天するキリストが描かれています。左右に立っているのは使徒たちに主の昇天を告げる天使でしょう。中段に立っているのは聖母マリアと十二使徒で、驚きながら昇天するキリストを見上げています。

3.キリストの磔刑

後陣の下段に描かれているのは「キリストの磔刑」を中心とする諸場面です。左端ではキレネのシモンが十字架を運んでいます。磔刑のキリストの左右にいるのは同時に磔刑になった善き盗賊と悪しき盗賊です。右端には「キリストの復活」の場面があります。

4.受胎告知

イエスの生涯の諸場面は右側壁の2段目に描かれた「受胎告知」に始まります。マリアは神殿の建物の中にいて、大天使ガブリエルが外から神のメッセージを伝えています。窓の隅切りには天使の姿があります。簡潔で力強い表現です。

5.エリサベト訪問

窓を挟んで「エリサベト訪問」の場面が続いています。マリアとエリサベトは抱き合って頬を寄せて挨拶を交わしています。白い衣の方がマリアです。後にいる女性はマリアに付き従ってきた召使でしょう。マリアが一人旅をすることはありませんので。

6.キリストの降誕

イエスを産んだばかりのマリアは、不思議な形のマットに横たわって幼子を見ています。幼子は秣桶ではなく祭壇のような台の上で寝ています。左端にはヨセフがいるのですが、画面には入っていません。右からやって来るのは羊飼いたちです。

7.マギの礼拝

幼子を膝に抱いて正面を向いて座るマリアの姿はロマネスクの木彫の聖母子像と同じです。右からやって来たマギは跪いて幼子にプレゼントを差し出しています。残る二人のマギたちは窓の隅切りに描かれています。頭に被っているのはフリギア帽でしょうか。

8.神殿への奉献

4人の登場人物によるシンプルな「神殿への奉献です。聖母マリアと幼子の顔は残念ながら失われています。老人シメオンが祭壇の上で幼子を抱き取っています。マリアの後には捧げ物を持つヨセフが、シメオンの後には女預言者アンナの姿があります。

9.ラザロの蘇えり

低い段にあり、保存状態の良い場面です。ベタニアの人々がラザロの棺の蓋を開き、屍衣に包まれ鎖で縛られたラザロがイエスの霊力によって蘇えっています。死後4日たっていますから、ラザロの顔は灰色です。イエスの後にはマグダラのマリアがいます。

10.ユダの接吻とイエスの就縛

ユダが接吻するイエスの視線がマルコスの耳を切るペトロに注がれているのは、あのヴィックの壁画と同じです。キリストの前にはイエスの腕を掴んで捕えようとするユダヤ人たちの姿が見えます。無駄のない、簡潔で力強い構図と描写が印象的です。

私は朝日カルチャーセンターの新宿教室、横浜教室、立川教室、中之島教室でもロマネスクの講座を担当しています。お申込みいただけば、いつでも受講が可能です。朝日カルチャーセンターの講座については下記からご覧ください。

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