ルーヴル美術館のロマネスク彫刻10選┃ロマネスク写真館

池田健二氏のロマネスク写真館16回目の投稿となります。

池田健二氏が撮った美しい写真と解説をどうぞお楽しみください。

目次

第16回のテーマ-「ルーヴル美術館のロマネスク彫刻10選」

皆さん、ルーヴル美術館にロマネスク彫刻の展示があるのをご存じですか。
ルーヴルの彫刻作品といえば、まず思い浮かぶのは「ミロのヴィーナス」や「サモトラケのニケ」ではないでしょうか。

しかし、ロマネスクの彫刻もあるのです。その場所はリシュリュー翼の1階の展示室、200号室から202号室にかけての3室です。そこにフランス全土から収集されたロマネスクのタンパン、柱頭、石彫の断片、聖母子像、キリスト像などが展示されているのです。全部で百数十点ほどでしょうか。どれも素晴らしい作品ばかりで、一見する価値があります。

パリの観光の中で、ルーヴルの中で、ロマネスク彫刻をゆっくり観賞する、というのはどうでしょう。幸いなことに、この展示室を訪れる観光客は決して多くはありません。静寂の中で観賞と休息の時を過ごすことができます。

1.ロマネスク彫刻展示室の入口

リシュリュー翼1階の200号室にある最初の展示です。これがルーヴルにあるロマネスク世界の入口です。見えているのはトゥールーズのラ・ドラード修道院の5世紀後半の装飾的な円柱、パリの教会にあった「獅子の穴のダニエル」の柱頭、サン・ジルの修道院にあった扉口などです。プレロマネスクとロマネスクの作品が入り交じっています。

2.鳩とパッメットのタンパン

ラングドックのサン・ジルの町にあったサント・セシル修道院の教会の扉口を飾っていたタンパンです。その空間を埋め尽くしているのはパルメット唐草です。中心に刻まれているの鳩は聖霊の象徴でしょうか。ラントーにも唐草が刻まれていて、その中心でも二羽の鳩が向かい合っています。優美な装飾性が見事なタンパンです。

3.獅子の穴のダニエルの柱頭

パリにあったサント・ジュヌヴィエーヴ教会の柱頭です。今はその場所にパンテオンが建っています。大理石の柱頭で、刻まれているのは「獅子の穴のダニエル」です。中央に思いに耽るダニエル、両脇にはおとなしく従うライオンの姿があります。優美で端正な作風はパリを中心とした12世紀の北フランスのものです。

4.キリストの復活の柱頭

ラングドックのサン・ポン・ド・トミエールにはベネディクト会の修道院があり、その回廊は素晴らしい柱頭彫刻で飾られていました。しかし、宗教戦争の混乱の中で回廊は破壊され、柱頭は散逸してしまいます。墓に詣でる聖女たちとキリストの復活を告げる天使を刻むこの柱頭はその回廊にあったもので、ダイナミックな表現が魅力です。

5.羊飼いへのお告げの浮彫

ポワティエの西、パルトネーのノートルダム・ド・ラ・クードル教会を飾っていた浮彫のパネルです。場面は天使が羊飼いたちにキリストの降誕を告げる瞬間です。マントを纏い杖を手にした羊飼いたち。中央ではまだ幼い羊飼いが羊の毛を刈っています。足元には草を食む羊の姿があります。田園的な場面が展開しています。

6.バロリーユの聖母

ピレネーの麓のバロリーユの村のノートルダム教会にあった木彫彩色の聖母子像です。少し悲しげな表情をしているのは、我が子の十字架上での死を予知してのことでしょうか。木彫の聖母子像はオーヴェルニュとカタルーニャで盛んに制作されました。バロリーユはカタルーニャの文化圏ですから、この像もカタルーニャ製なのでしょう。

7.聖ミカエルの龍退治の浮彫

ブルゴーニュの西部、ヌヴェールのノートルダム修道院から出た浮彫の断片です。タンパンの一部ではないでしょうか。大天使ミカエルが龍を踏みしだいて槍を突きたてています。天使は横向きで全体が三角形の構図を成しています。天使の衣や羽根の表現も見事です。ブルゴーニュとベリーの二つの地方の作風を示す傑作です。

8.十字架降下のキリスト

ブルゴーニュから来た木彫のキリスト像ですが、どの教会にあったのかは分かりません。キリストの体は右に傾き、腕も下がっていますから、十字架降下の場面だったはずです。おそらく、オーヴェルニュで制作され、ブルゴーニュに運ばれた作品でしょう。静かな表情に深い精神性が宿る素晴らしいキリスト像です。

9.葡萄の収穫の柱頭

ブルゴーニュのムーティエ・サン・ジャンの修道院にあった柱頭です。摘み取った葡萄を籠に入れて運びながら、桶に入れた葡萄を片足で踏んでいる農夫の姿を、生き生きと表現しています。この農夫の後には葡萄を摘む男がいて、前には葡萄の果汁を樽に注ぐ男の姿があります。ワインの有名な産地であるブルゴーニュらしい図像です。

10.マギへの夢のお告げの柱頭

イル・ド・フランスのクーロンヌの修道院にあった柱頭です。この柱頭は装飾柱を束ねて捩じった形状の個性的な柱の上に乗っています。場面は一つのベッドで休む三人のマギに天使が現れる「マギへの夢のお告げ」です。オータンにも同じ場面を刻む有名な柱頭があります。ロマネスクの時代に愛され、頻繁に表現された図像です。

いかがでしたでしょうか。次回も是非ご覧ください。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次